異なった発想を持つ人材による専門領域を越えた総合的調査研究活動・新世代を担う人材の育成・人類社会への貢献

ATI -公益財団法人 新世代研究所- Foundation Advanced Technology Institute.ATI -公益財団法人 新世代研究所- Foundation Advanced Technology Institute

ATF研究助成

※2023年11月 財団名称変更により ATF研究助成に変わりました。

2016年度ATI研究助成の採択テーマは下記のとおり決定されました。

  • 応募数 : 95件
  • 採択数 : 10件
  • 助成金総額 : 1,000万円  

 <2015年採択一覧                             2017年採択一覧>

No. 研究題目 氏名 役職 所属研究機関 成果
報告書
1 GCNを利用した超高屈折率有機薄膜の開発 宮島 大吾 基礎科学
特別研究員
理化学研究所  
 グラフィティックカーボンナイトライド(GCN)は炭素と窒素からなるグラフェン様2次元高分子で、これまでメタルフリーの光触媒として盛んに研究がされてきたが、溶媒に不溶の粉末としてしか得られず、それ以外の物性は調べられていなかった。本研究はGCN を利用した薄膜を開発し、高屈折率材料としての応用を目指す。
2 有機酸化反応によるCNTの分解と
内包1次元ナノ物質の抽出
大町 遼 助教 名古屋大学  
 カーボンナノチューブ(CNT)の内部空間を利用して、これまで様々な1次元ナノ物質が合成されてきたもの、CNT に内包された状態での測定・観察にとどまっており、外層のCNT を取り除くことが求められていた。本研究ではCNT の有機酸化分解を鍵反応とした、選択的な「酸化分解抽出法」を確立するとともに、未踏の新奇1次元ナノ物質の抽出を行い、その基礎的な物性の解明を目指す。
3 ヘテロメタルナノサイズ分子磁石の機能発現 姜 舜徹 特任助教 九州大学
 分子メモリや分子スイッチなど、単一分子に、従来の電子素子の機能を担わせることを目指した分子エレクトロニクスの研究競争が世界的に展開されている。本研究では、申請者が最近開発したナノサイズ分子磁石を基盤として、金属原子が持つスピン、電荷、軌道の自由度を活用し、その電子状態を制御することで、新奇機能を有するナノサイズ分子磁石の開発を目的としている。
4 僅かな温度差でバイオ・ナノ材料を濃縮できる イオン液体の開発 河野 雄樹 研究員 産総研
 これまでに申請者は、水和状態を適切に制御したイオン液体が僅かな温度変化で水と混合・相分離を繰り返すことを見出した。本研究では、混合・相分離機能とバイオ・ナノ材料溶解能の双方を兼ね備えた「インテリジェントイオン液体」を新たに開発し、水相に溶存するタンパク質やナノカーボン等を温度差のみで濃縮するプロセスを構築する。さらに、イオン液体との複合化による上記バイオ・ナノ材料の新たな機能発現を目指す。
5 自己組織化ナノ相分離構造を活用した
電気化学発光セルの開発
込山 英秋 特任助教 九州大学
 本研究では、ブロック共重合体が自己組織化により形成する100 nm から101 nm スケールのナノ相分離構造を利用して、有機半導体発光分子を分子およびナノレベルで階層的に集積する技術を確立し、電気化学発光セルデバイスへと展開することを目的とする。超高密度な分子集積による高精細化や、ナノ空間への分子閉じ込め効果による異方的な発光などの機能を有するこれまでにない革新的な電気化学発光セルの作製が期待される。
6 原子間力顕微鏡を用いた
ウイルス感染機構の力学的評価
西村 勇哉 特命助教 神戸大学
 B 型肝炎ウイルスが肝細胞に感染する機構は長年研究されている。その成果として、ウイルス側の肝細胞認識部位は特定されている。しかしながら、肝細胞側の受容体はいまだ明確にされておらず、作用機序の解明が求められている。そこで本研究では、B 型肝炎ウイルスのモデルとしてバイオナノカプセルを使用し、肝細胞との相互作用を原子間力顕微鏡(AFM)によって力学的な切り口で評価することを目指す。
7 希薄気体効果を利用した負の熱拡散を可能とするナノ複合材料のトポロジー最適化 山田 崇恭 助教 京都大学
 気体分子の平均自由行程の大きさが無視できない微小スケールにおいて、温度場により流れ場が誘起されることが知られている。本研究では、この希薄気体流れに着目し、この現象の逆、すなわち、流れ場により温度差が生じる現象(負の熱拡散)を生じさせるナノ構造体の創成設計法を開発する。具体的には、DSMC 法と最適構造設計理論に基づき、所望の現象を生じさせるナノ複合材料を創成可能な最適設計アルゴリズムを構築する。
8 石英を骨格に用いた外場応答性ナノ空間材料 黒田 義之 助教 早稲田大学  
 本研究では、単結晶石英の内部に規則的ナノ空間を形成させ、外部電場により構造を機械的に制御可能な新概念のナノ空間材料の作製を目的とする。石英は水晶振動子への利用が良く知られる様に、圧電性を示すシリカの多形である。石英を骨格に持つナノ空間は、交流電場の様な外部刺激に応じて空間の形状を高速に変化させられると期待できる。これを利用し、ナノ空間における分子輸送、触媒反応の促進等の外場応答機能の発現を目指す。
9 ナノ凹凸表面を利用した高効率細胞培養技術への挑戦 洞出 光洋 助教 大阪大学
 

iPS 細胞を用いた臨床応用・創薬の実現には、材料となる細胞を多量に用意する必要があり、細胞を培養させて供給する必要がある。本研究課題では、ナノ凹凸を有する細胞付着防止膜付き培養系(培養ディッシュ)を開発する。そして、熟練技術や高価な薬品を必要とせず、容易で高効率な細胞培養技術の確立を目指す。本研究課題は、微細加工学をベースとし、再生医療分野の要素技術確立へ挑戦する.

10 核スピンを用いたスピン流の生成および
スピン流生成物質の評価
今井 正樹 特定課題
推進員
日本原子力
研究開発機構
 本研究は核スピンを用いた新規スピン流生成法の実証、およびNMR を用いたスピン流生成材料の評価により材料選択の指針を与えることを目的とする。核磁気共鳴条件に対応した周波数の定常ラジオ波を照射して核スピン系を励起し、接合している白金層にスピン流を注入する。白金の逆スピンホール効果による電圧測定によってスピン流の検出を行う。また、NMR 測定法によって緩和時間を測定することで材料の微視的な物性を評価し、スピン流生成効率を決めている物性変数を実験的に探索する。