異なった発想を持つ人材による専門領域を越えた総合的調査研究活動・新世代を担う人材の育成・人類社会への貢献

ATI -公益財団法人 新世代研究所- Foundation Advanced Technology Institute.ATI -公益財団法人 新世代研究所- Foundation Advanced Technology Institute

ATF研究助成

※2023年11月 財団名称変更により ATF研究助成に変わりました。

2015年度ATI研究助成の採択テーマは下記のとおり決定されました。

 <2014年度採択一覧                           2016年度採択一覧>

No. 研究題目 氏名 役職 所属研究機関 成果
報告書
1 史上初の有機二次元トポロジカル絶縁体「ジチオレンナノシート」の創製 坂本 良太 助教 東京大学
 トポロジカル絶縁体(TI)とは、内部は絶縁性だが周縁部がスピン偏極した金属性を示す「新奇物質」である。その実在例が無機物の三次元結晶に限定される状況で、本研究では、史上初となる有機二次元TIの実証を行う。申請者が創製した「ジチオレンナノシート」が二次元TIとして振る舞うことが理論予測されたのを受け(Nano Lett. 2013, 2842)、走査トンネル分光による特徴的なエッジ状態の観察、角度分解光電子分光による二次元TIバンド構造の実測、量子スピンホール伝導の観測などの実験的実証を行う。
2 ナノデバイスの超高密度実装に向けた光操作によるDNA Highwireの形成 寺尾 京平 准教授 香川大学
 本研究は、申請者がこれまでに実現した独自技術であるDNA分子の非侵襲操作技術をベースに、DNA分子をマイクロピラー電極間を橋渡しする状態で懸架し、溶液中にDNA Highwireと呼ぶ新たな1次元ナノ構造を形成する。これを塩基配列の相補性によりナノデバイスが結合する足場として利用することにより、ナノデバイスの位置制御と超高密度な集積化に繋げることを目的とする。
3 多孔性配位高分子の規則性ナノ空間に取り込まれた水素の物性解明 犬飼 宗弘 講師 徳島大学
 水素貯蔵の新規材料群として期待されている多孔性配位高分子のナノ空間で拡散する水素分子の物性を解明する。ナノ空間に取り組まれた水素分子の高分解能固体NMR測定を可能とする特殊NMR試料管を開発し、PCPナノ空間に取り込んだ気体分子を対象にNMR測定を実施する。水素分子の局所構造・拡散挙動等を解析することで、ナノ空間といった特異的な空間における水素分子の物性を明らかにする。
4 基板表面に環状タンパク質を集積した光利用デバイスの開発 大洞 光司 助教 大阪大学
 ナノスケールのヘムタンパク質環状集合体を補因子置換法により、光合成系に含まれるような光捕集ユニットへ機能改変する。さらに、金やカーボン基板への固定化を行い、光エネルギーを効率的に電気エネルギーへと変換可能な利用システムへと展開する。最終的にはタンパク質を基盤としてボトムアップ的に色素を精密に集積化した高効率な光増感色素太陽電池の開発をめざす。
5 金属クラスターのナノ構造制御に基づく人工光合成モデルの提案 石田 洋平 助教 北海道大学
 植物の光合成系はクロロフィルの規則配列により高効率な太陽光捕集を達成し、光合成反応を実現している。本研究では、金属を分子として用いた全く新しい人工光合成モデルを提案する。近年、金属原子数十個からなる金属クラスターが、有機分子のような光学特性を示すことが明らかになってきた。秩序立った集合構造を構築することで金属クラスターの分子としての性能を最大限に引き出し、全く新しい人工光合成モデルを提案する。
6 ナノ分子電気化学スイッチング素子の開発とバイオ計測への応用 伊野 浩介 助教 東北大学
 本研究ではナノ空間内の溶液中での分子拡散と電気化学反応を緻密に制御することで、電界効果トランジスタのような動きをする「ナノ分子電気化学スイッチング素子」と呼ばれる新しい概念を提案する。このスイッチング素子を用いて、電気化学センサを高密度化・高感度化した電気化学センサデバイスを開発する。この開発したデバイスを用いて、生体組織や培養細胞の活性をイメージングし、再生医療、創薬研究への展開を検討する。
7 次世代メモリ実現のためのBi系マルチフェロイック材料の開発 北條 元 助教 東京工業大学

 スマートフォンの普及やビッグデータなどにより情報処理量の爆発的な増大に伴う、情報機器の消費電力が問題になる中で、低消費電力・高記録密度・不揮発性の次世代メモリデバイスへの要求が高まっている。本研究では、マルチフェロイック物質であるBi(Fe,Co)O3薄膜について、電場による磁化反転を実証し、低消費電力の不揮発性磁気メモリへの道を開拓する。

8 ナノシリンダーと組織化された内包分子の相互作用による光学特性の発現 小山 剛史 講師 名古屋大学 準備中
 発光性分子をカーボンナノチューブに内包した多くの複合体では、内包分子の光励起後に、内包分子からカーボンナノチューブに光励起状態が移動する。この移動はフェムト秒からピコ秒領域で起こるため、内包分子の発光は強く抑制され、その発光機能が大きく損なわれる。本研究では、カーボンナノチューブに内包された分子の組織化を活用し、逆方向の光励起状態の移動が起こり得る複合体を作製、その発光特性を評価する。
9 省エネルギーリニアモーターの運動性を決める構造的要素の解明 中村 彰彦 助教 自然科学研究機構
 セルロース加水分解酵素はレールであるセルロース分子鎖を分解しながら一方向に運動するリニアモータータンパク質である。運動にはトンネル状の基質結合サイトが必要であるとされているが、その構造機能相関については明確ではない。そこで運動パラメーターの異なる酵素同士でトンネルを構成するループ領域を入れ替え、蛍光顕微鏡や高速AFMを用いて運動の変化を直接観測する事で運動性を決めている構造的要素を明らかにする。
10 イオン液体-電極界面の電気二重層に関する理論解析 安藤 康伸 助教 東京大学
 イオン液体-電極界面に生じる巨大な静電容量の起源を、第一原理分子動力学計算とインフォマティクスを用いた統計解析によって明らかにする。本結果から、イオン液体を用いた電気二重層キャパシタの大容量化へむけた開発指針や、イオン液体の界面構造、電気二重層トランジスタによる誘起キャリアに関する微視的モデルの構築を目的とする。
11 分子クラウディング効果を利用した1分子DNA検出法の開発 佐々木 直樹 講師 東洋大学
 分子クラウディング効果をPadlock Rolling Circle Amplification(Padlock/RCA)法に応用し、感度面でリアルタイムPCRを上回る定量1分子検出法を開発する。これを細菌DNAの検出に応用し、細菌の迅速・高感度・高精度・現場分析法の原理を実証する。
12 ナノ微細構造をもつ珪藻殻を利用した高出力バイオ燃料電池の作製 根本 理子 特任助教 岡山大学 準備中
 バイオ燃料電池の出力密度を向上させるためには、比表面積が大きい多孔質材料を利用した電極の開発が重要となる。本研究では、ナノ微細構造をもつ珪藻の殻を電極材料として利用することで、高出力のバイオ燃料電池を作製することを目指す。電極は、遺伝子組み換えにより酸化還元酵素を発現させた珪藻の殻に導電性を付与することで作製する。